研究内容 Research
Research Topics
To gain a better understanding of physiological role(s) of carbohydrates and amino acids in fruit quality and development, our research group focuses on starch and GABA metabolism and their use during fruit development of tomato, which represents an ideal plant model for many fruit species. We have also investigated the cross-talk of metabolic regulation of carbon and amino acid and abiotic stress such salinity. Additionally, we are trying to produce high value-added tomato resources with high sugar and/or GABA contents through screening of mutants and generation of transgenic lines.
環境ストレスに強い高収量・高品質作物の開発を目指して
私たちは栽培環境ストレスが作物の品質にどのように影響するのか?を研究しています
トマトは、日本の食卓の洋風化に伴い急速に普及し、今や毎日の食生活を代表する野菜となりました。トマトの食味は糖(甘味)・有機酸(クエン酸など=酸味) ・うま味(アミノ酸)の3要素から成り立っていますが、それらを合成・分解する酵素遺伝子の調節については、まだ完全には解明されていません。当グループでは、 栽培環境によってなぜ食味や果実品質が変わるのか(=環境ストレスにより糖・有機酸・アミノ酸の合成・分解や、果実の硬さがどのような影響をうけるのか)?を解明することにより、 環境ストレスに強い、高品質の果実を生産する研究を進めています。

乾燥・塩類ストレス条件下でトマトを育てると果実の甘みが増すことが知られており、フルーツトマト生産などに利用されています。私たちは果実が糖を蓄積するメカニズムを遺伝子機能の面から
研究し、果実発達初期のデンプンの蓄積が重要な役割を果たすことを明らかにしました。現在、果実における糖、有機酸、アミノ酸の代謝制御に関与する遺伝子の解析を進めており、果実成分への効果を
検証しています。
糖・有機酸を高蓄積するトマトを作る
果実の糖・有機酸の蓄積に重要な役割を担うと考えられるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (PEPCK) の生理機能解明に取り組んでいます。PEPCKの発現を改変した遺伝子組換え
トマトにおいて、PEPCKの発現レベルに応じて果実の糖含量が大きく増減することを明らかにしました。PEPCKは有機酸から糖を合成する糖新生反応の入り口を制御する酵素です。私たちの研究結果は、赤熟果実
の糖蓄積に糖新生が大きな役割を果すことを示しています。
作物の塩ストレス耐性メカニズムを解明する,耐塩性を付与する
私たちは塩ストレスがトマト果実において糖蓄積を促進する現象(いわゆる“フルーツトマト”です)について、そのメカニズムの解明に取り組んできました(後述参照)。しかし、その一方、海外に目を転じると、
過剰な施肥、過灌水による農地への塩類蓄積は乾燥・半乾燥地帯において深刻な問題となっており、農業生産に深刻なダメージを与えています。当研究グループでは塩ストレス栽培の研究に取り組んできた
経験を活かし、耐塩性変異体の単離、形質転換系統の解析を通して新たな耐塩性遺伝資源の開発や、新規耐塩性機構の解明に取り組んでいます。
根圏窒素環境が開花に与える影響と作用メカニズムを解明する
窒素は作物にとって三大栄養素の一つであり、その取り込みや代謝は作物の様々な生理・生長過程に影響を及ぼします。根圏の窒素環境が作物の開花のタイミングに影響を及ぼすことは古くから経験的に知られていましたが、
植物種により応答性に差があり、その作用メカニズムには不明な点が多く残されています。私たちはナス科中性作物のトマトに低窒素ストレスを与えると開花が早くなることを確認しており、現在、そのメカニズム解明に取り組んでいます。
得られた知見は減肥料農法等における開花時期の影響評価に有用となるだけでなく、将来的には作物の開花タイミングの制御技術の開発などに活用できると考えられます。

作物の茎における同化産物転流・分配制御機構を解明する
作物にとって茎部は植物体を支える構造器官であるだけでなく、ソース(葉)とシンク(種子、果実など)をつなぐ長距離輸送経路としての役割を持ちます。光合成同化産物の輸送の効率化は作物の収量性を改良する上で重要と考えられますが、 茎部における同化産物輸送の制御メカニズムはよく判っていません。私たちは茎部が単なる輸送器官ではなく同化産物の輸送・分配の制御に能動的に関与していると考えています。そこで、光合成同化産物の移動を非破壊。リアルタイムで イメージングする解析(PETIS)を通して茎における同化産物輸送の動態を解明し、「茎」が内包する同化産物輸送・分配の制御機能の解明に取り組んでいます。

研究費
科学研究費補助金
(1) 基盤研究 (B) (令和3〜6年度) 「植物の同化産物輸送・分配制御機構の解明 ?転流における茎の機能-」(代表者:松倉千昭)
(2) 基盤研究 (C) (平成28〜30年度) 「果実細胞壁・果皮クチクラ生合成経路の解明-果実内デンプン分解産物の
ダイナミズム」(代表者:松倉千昭)
(3) 基盤研究 (C) (平成25〜27年度) 「果実の糖蓄積および糖酸バランス調節における糖新生・PEPCKの
機能解明」(代表者:松倉千昭)
(4) 基盤研究 (C) (平成21〜23年度) 「環境ストレスと果実糖代謝のシグナルクロストーク現象の実態解明」
(代表者:松倉千昭)
(5) 若手研究 (B) (平成16〜18年度)「トマトの果実発達における果実維管束の特性と糖代謝・糖蓄積制御
機構の解明」(代表者:松倉千昭)
その他
(1) 民間企業との共同研究・「植物生長促進に関する研究」(令和2〜6年度)
・「ストレス耐性遺伝子探索」(令和元〜2年度)
(2) 福島国際研究教育機構(F-REI)
「植物RIイメージング研究拠点の形成と応用研究の展開」(課題代表:量子科学技術研究開発機構)
(令和6〜10年度)(分担者)
(3) 令和元年度筑波大学研究基盤支援プログラム
「"茎" における同化産物転流制御の実態解明〜葉と果実の間で何が起きているのか?」(代表者:松倉千昭)
(4) 科学技術振興財団研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム (A-STEP)
平成 25 年度フィージビリティスタディステージ(探索タイプ)
「機能性成分・GABA を強化した新規高付加価値トマト遺伝資源の探索」(代表者:松倉千昭)
(5) 公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団 平成24年度助成研究
「塩ストレスによるトマト果実一次代謝制御の分子メカニズム解明」(代表者:松倉千昭)
(6) (独) 農業・食品産業技術総合研究機構・生物系特定産業技術研究支援センター
生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業 (平成17〜21年度)
「トマト機能性成分を活用した花粉症・生活習慣病対策食品の開発」
分担課題「γ-アミノ酪酸生合成制御遺伝子解析と高含有トマト栽培技術開発」(分担者),
(分担課題代表:江面浩)